7月6日の東京新聞に掲載されました。
下記記事東京新聞より転載しました。
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【埼玉】
<ひと物語>障害者と野菜づくり 農業生産法人「風」社長 高田 昌彦さん
福祉と農業を組み合わせたビジネスを手がける高田さん=所沢市で |
所沢市下富のビニールハウス。右半身が不自由な男性や知的障害のある男性らが汗を流しながらナスやトマトの手入れをしていた。作業を見守る高田昌彦さん(73)が時折「きちんと収穫できるのか?」と声を掛ける。ぶっきらぼうな口調だが目は優しげだ。障害者の男性の一人は「社長はいつもあの調子だから」と笑う。高田さんは「障害者だからと特別扱いはしないんです」と話す。
障害者二十人、健常者六人が働く農業生産法人「風」の社長を務める。農家の担い手不足を補うと同時に障害者の雇用を進め、新鮮な野菜を都市近郊の消費者に届けようと、二〇一一年八月に立ち上げた。所沢や三芳町で農地を借り自社農園として野菜を作り、地元の直売所「野菜集まれ市場ぶんぶん」(所沢市中新井一)で販売している。
障害者従業員のうち、畑での作業に従事するのは男性十一人。身体、知的、精神など障害の状態もさまざまだが、同じ職場で分け隔てなく働く。草むしりや野菜を束ねる作業など、根気が必要な作業を音を上げることもなく黙々とこなしていく。直売所では女性六人、男性三人。接客や袋詰め、計量などの作業を自分たちで行う。
「指示さえしっかり出せば、みんな一生懸命頑張り結果を出す。農作業担当のメンバーはとりわけ生き生きしてます。自然に囲まれた環境が精神面でいいんでしょう」と高田さん。
法人立ち上げ直後の運営は順調とは言えなかった。健常者の若者五人を雇って農作業を始めたが生産性が上がらず、一一年末には撤退も覚悟した。
それを思いとどまらせたのが、職場実習生として受け入れ農産品直売所で働いていた障害者たちだった。「やめないで」「私たち行くところがなくなってしまう」。泣きながら必死に訴える姿に高田さんは、彼らを中核にして事業を立て直そうと決意。一二年四月に障害者就労継続支援事業所の認定を受け、従業員として雇用した。
現在は野菜の生産・販売だけでなく、地域とのつながりを深め、所沢産野菜のアピールにも力を入れようとしている。今月十九日には市民向けの収穫体験、二十六日には夏野菜料理教室を有料で実施する予定で、参加者を募集している。
「障害者が作り売っているからではなく、安心でおいしい地元産野菜、という理由で選んでもらえればうれしい」と話す高田さん。農業と福祉を組み合わせたビジネスが本格的に羽ばたくのはこれからだ。 (上田融)
<たかだ・まさひこ> 東京都武蔵野市出身、所沢市在住。食肉会社などに勤めた後、1991年から所沢市内で不動産会社を経営。2003~11年に所沢市議を2期務めた。19日の所沢産野菜収穫体験は参加費500円、26日に直売所で開く夏野菜料理教室は同1000円。参加申し込み、問い合わせは「風」=電04(2942)3600=へ。
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